この展覧会の特徴は,こどもたちにハワイの多文化社会を展示を通して体験してもらう教育プログラムにあります。教育プログラムの一端を紹介すると,展示室で来館者は,初期の日系人がさとうきび畑で使った作業着の複製を親子で着用したり,スーパーマケットでの買物を擬似体験します。こどもたちは展示案内のボランティアと一緒に,たからさがしの要領で展示品を探して歩いたり,パズルやゲームを通して楽しみながら学ぶなど,こどもたちの興味を引き出し,理解を深める工夫がこらしてあります。
またこれまで巡回した沖縄でも大阪でも,多くの学校が総合的な学習の時間を視野に入れて,博物館が用意した学習プランを採用して展覧会を訪れています。展覧会を訪れた生徒は,興味を持ったテーマで学校に戻ってから自分なりに調べてレポートを書いたり,移民の生活や歴史についての壁新聞を作成したクラスもあります。郊外学習にこの展覧会を選んだ多くの教師が,「この展示体験は,多民族社会に向かう現代日本のこどもにとり,大変意義ある経験だと思う」と答えています。
“総合学習”と呼ばれるこのプログラムは,最初,ハワイ在住のアドバイザーで構成される全米日系人博物館の協議会メンバーによって開発されました。その中心になったのは教育学者ナンシー・ヒュウ,イチロー・フクモト博士,マリー・タノウエの各氏です。ハワイ日系人の生活から選んだテーマを教材化し,展示室で自ら日系移民になったつもりで体験的な学習ができるようになっています。これをもとに,新しい日本語版が作られました。その中心になったのは,中央大学教授の森茂岳雄氏,東京学芸大学付属世田谷小学校中山京子教諭と,博物館の教育部スタッフです。日本巡回展の日本語テキストの監修は,沖縄キリスト教女子短期大学教授の新垣誠氏が担当しました。